もしも時間を戻せたら。
記憶を持ったまま時間を戻して再び選択の機会を得られるという夢のような能力に目覚めた主人公マックスの物語『ライフ・イズ・ストレンジ』。オブジェクトを調べながら設定の背景を掘り下げていくポイント&クリックの古典と、巻き戻しの能力を使い直前の行動を吟味して理想と思われる未来を描いていく世界観重視のADV。
ADVの大事な下地となる雰囲気は◎
舞台は洋画に出そうな良くも悪くも典型的なティーンエイジャーの集まる学校。SNSを使う近代的なイジメから校内での射殺事件にえげつないスクールカーストなど、しょっぱなから無茶苦茶なものを見せてくるぶっ飛び校はいかにも洋ゲー。そんなぶっ飛びだとしても時間を戻して選択肢を変更することによる未来への影響を考慮すればするほど言動に重みは増していき、日記などから得られる情報も現実的な描写なので世界に入り込みやすく選択のひとつひとつに一喜一憂させてくれる。
何度も巻き戻して全ての結果を見届けたうえでの決断がどのような未来を描くのだろうか、期待と不安の入り混じった演出で始まる導入は、どれを取っても先の展開への期待が膨らむものばかり。この巻き戻しと導入の出来は文句なかったが……。
全ての選択肢を選ばせてくれる程度の巻き戻し能力でした(ねたばれ)
時間を戻して運命を捻じ曲げると未来で避けようのない代償が生じる。だから能力が目覚めた瞬間に戻って理不尽だとしても手を出さず運命に従うか、手を加えてしまった未来で代償を受け入れて生きていくかを選ばされる。つまり今までの選択には何も意味はなく行き着く結末は固定の2択となる。これでは何のために期待と不安の感情を揺さぶられながらも続けていたのだろうかとエンディングを見ても余韻は喪失感ばかり。選択次第で何通りにも分岐する未来を楽しめるようなゲーム要素も一切なかったのでなおさらツッコミどころに。
マックスが手にした能力や代償の因果関係についての説明がほとんどなく「何故」を補う部分が欠けてるから理解が追いつかないのに、終盤でメッセージ性の強い悪夢や精神世界のような抽象的な表現までもが次々と入ってくる。
巻き戻したことにより変化していく未来の結末を期待していただけに、マックス本人の問題に焦点が絞られた展開にシフトしていくことは、導入で夢中になれたゲームとのすれ違いを残酷なほど意識させられることとなった。
未来を選ばせるのにタラレバを認めないのは運命を捻じ曲げるゲームと相反する。
最初から分岐も何もない一本道なら見え方も変わっていただろうが、ゲームとしてプレイヤーを介入させた以上は元に戻す時間軸は別としても代償を受け入れる場合はその後をみせてくれてもいいはず。
やり直したからこそ経験できる全ての選択肢の結果から大切なことを学び、間違えてもやり直せばいいではなく、常に後悔が残らないよう最善を尽くす事なかれ主義からの脱却。この前半~中盤までの展開が「未来を選ぶ期待と不安」を煽り夢中にさせたのにオチは固定でその後は見せないという手法で全て崩れた。派手に風呂敷を広げるプロローグと我関せずと夜逃げするエピローグの悪夢。期待を返して。
自身の選択により未来を変化させていくゲームとしての遊びを求めるのではなく、オチの2択に至るまでの過程を考察したりするのが好き人なら楽しめるのかもしれません。
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