デスゲームのビジュアルノベル。
無人島へ連れ去られた挙句、爆弾が仕込まれた首輪を付けられ、各人に指定されたクリア条件を期日までに満たさなければ首輪が爆破されるというデスゲームに投入された14人の群集劇。殺人や犯罪に対する倫理観のご高説などはなく、各キャラに視点が変更される群集劇進行のため人物像がきっちり描かれて確立され、突如としてデスゲームの場に置かれた人達の迷いや葛藤、誰かが自分を狙っているかもしれないと情報を探る猜疑心、命の倫理的価値が無くなった絶望的な状況での様々な思いが絡んだ展開は異様に引き付けられ、最初の犠牲者が出てクリア条件が争いを助長するものに変更されたころにはもう目が離せなくなっていた。
ゲーム的すぎるキャラクターは問題
いきなり銃撃も斬撃も何も効かない超人的強さのメイドが現れた時には辟易したし、過去に1度参加しただけで超人的に強くなっていたり、刀を持つと敵なしの超人になる参加者がいたり、異能バトルのようなゲーム的すぎる人物設定が現実味を希薄にし、折角のデスゲームの恐怖や絶望を潰していくのは大きな問題。ご都合主義丸出しのつっこみ所も満載だし、表現もかなりやわらかいものになっているので、もはや全年齢向けエンターテイメント。序盤は驚くほど没頭できたデスゲームだったが、犠牲者が出れば出るほど上記のようにフィクションが過ぎて失速するばかりだった。
視点を変えて各々の行動原理や人物像に理解を深めながら進行する群集劇の出来自体は良く、状況がどうなろうとなんだかんだで主張を一切曲げなかった参加者には感情を揺らされたし、その他のキャラもモブ扱いが居ないのでキャラゲーとしてなら十分あり。
「たられば」で状況や視点を変えることで細かな設定や人物描写の理解を深め、主催者の思惑ひとつで変更されるルールに理不尽に翻弄される様を描くシナリオと、それに抗う最後のシナリオまでに各人の行動原理に説得力が付け加えられて最後まで引き込まれた。
ただ、「たられば」で周回させるならクリア条件の変更や特殊機能の入れ替えだとか思い切った展開も見たかった。面白かっただけに。
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