【ゲームアーカイブス】うたわれるもの 散りゆく者への子守唄【SRPG】

★★★★ ADV ゲームアーカイブス ストラテジー


記憶喪失系主人公の軍記風物語のSRPG。

立ち絵の下部にテキストウィンドウのADVパートでシナリオを進行させ、ユニットを駒として動かすターン制の戦闘に勝利すれば物語が展開するオーソドックスなSRPG。

記憶を失って行き倒れていた主人公が親切な人に命を救われ、独自の世界観を舞台にした集落での療養ほのぼの生活から物語は始まり、世話になっている集落に圧政を敷く領主を征伐し、新たに国を興こし戦渦に身を投じることになるプロローグ。様々な人との出会いや別れの過程でキャラの心情や思惑などを深く描写していく人物重視の特色が濃い。

他勢力との戦やイベントを通して仲間が一人また一人と増えていき、勢力拡大と平行して主人公の抜け落ちた記憶の謎を絡めた物語が展開されていく。序盤から中盤までは典型的な個性付けがされた仲間の掘り下げイベントを通し、中世くらいの日本のような世界設定の理解を深め地盤を築く。主役以外の脇役にも良いキャラが揃っているので、喜怒哀楽のあるイベントが起こる毎にゲーム世界の雰囲気に段々と引き込まれていく感覚を味わうことができる。

終盤に物語の雰囲気が変わる

終盤に入ると主人公の記憶絡みで急展開になるが、シナリオの核である隠された部分がプレイヤーにはほとんど明かされないまま問答無用で進み、延々と焦らして最後に中途半端に発表してめでたしめでたしとなる。ただでさえ導入もろくにないSFの急展開で呆気にとられるのに、これではほとんど置き去りである。
プレイヤーの知る由もない事でゲーム内キャラだけが盛り上がり、プレイヤーがその内実の一端を知る頃はエンディング手前。クリア後にネタバレを読むことでようやくシナリオの筋道が薄っすらと見えるという構成がまずい。決してつまらないわけではないが、思い切った急展開にさせるのなら序盤~中盤までにもっとわかりやすい伏線を入れるなり理解を支援する描写がほしかった。
個性のある主人公だから投影はどうでもいいにしても、主人公が思い出せない事はプレイヤーも知らない、思い出したことはプレイヤーにも分かるようにするとか、知っている情報の差をある程度狭めてくれないとゲームとの一体感が薄れてしまう

まとめ

獣耳や尻尾に羽、色々な属性を詰め込んだキャラの個性を前面に出したイベントが主体になるいわゆる萌えゲーの作風(もともとはそっち方面のゲーム)。
イベントの中で男女共にとてもわかりやすく人物像や個性が描かれているので、節操無く集めた萌え属性を持つキャラ群だとしても、本編の物語に花を添えるキャストとして存在が確立されているから日常すら楽しく読める。終盤のシナリオには付いていけなかったが、そこに至るまでのイベントは喜怒哀楽があり魅入られた。キャラ重視ならおすすめできる。

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