多重次元の閉鎖空間・天神小学校が舞台のホラー。
特殊な閉鎖空間に閉じ込められるパニックホラー。いくつもの次元が重なり合い別次元でのことが干渉してくるなどネタとして面白い。叫び声だけが聞こえてきたり持ち物が次元を超えて飛んできたり、そこらに転がっている死体は実は……など、分かり易いホラーや悲劇の演出につなげているから想像が容易で恐怖できる。
閉じ込められてしまう天神小の呪いの真実が断片的に紡がれていく過程も、先が知りたくなるよう期待を煽る構成になっていて物語も夢中になれたし、今までは意味の分からない言動をしていただけの人物の事情が把握でき、その理由に合点がいったときには高揚もさせてくれた。
下手に全員が生き残るハッピーエンドなんて認めないのもホラーとして好印象。叫び声や泣き声により悲劇や凄惨といった状況の雰囲気が強調されて心を抉ってくれる演出も抜群。これら設定や舞台の雰囲気づくりはなかなかに良かった。
説得力を持たせる描写が少なかった
学校に渦巻く思念や呪いに接触して精神が蝕まれて気がふれるのは、過去の凄惨な事件やそれに起因することで理由付けは容易だけど、だからといって省略しすぎ。例えば、ナオミがセイコと事に及ぶまでにあった何かも説得力を持たせるため本人視点で見せてほしい。結果ではなく経過を。記憶がないでは面白くない。
はっきりとした事実現実が描かれずに場面が飛ばされることが多いから、言動の矛盾や辻褄やら面倒な理屈は全て極限状態や呪いのせいにしてゴリ押ししてるだけやんけというツッコミにつながる。そうなれば外堀を埋めていないから恐怖が起こっても霧散してしまうことも少なくない。
舌を抜かれたサチコが喋るのは他の幽霊と矛盾していておかしいし、別次元に飛ばされてるのに携帯に着信があったりメールの受信ができるなど。これもこれでモリシゲの場合はあり得ないことだからこそ恐怖を煽るようにみえるけど、テレビから這い出ててきて呪われるという単なる恐怖の象徴である貞子などとは違い、着信相手が相手だから作為感満載の予定調和と表裏一体となり興ざめも見える。
現実に起こりうる可能性を意識させるような描写が抜けているから、「もしかしたら」と思い起こして血の気が引いていく恐怖はなく、パニックホラー寄りの“魅せ”によるその場限りの恐怖が目立つ。声で救われている部分も相当大きいと思う。エンディングは生還した安堵と同時に白々しさも余韻として残った。
スキップやデータロードなどのシステムの粗も目立った
バッドエンディングは叫び声や暗転で終わらせるようなつまらないものならば最初から要らない。そんなのでエンディングを水増しされても途中ロードやスキップがないから回収が面倒なだけで現実に引き戻される。地形が変形することに関しては多重次元で納得はできるけど、人を探しているのに「ここから先にはいってはいけない気がする」などといいだして強制的に行き止まりにする手法も相当な時代遅れ。
自分の意思で探索できるからこそ入り込めるのに「やらされ」を意識させてどうする。部分部分で光るものはあるけど粗もかなり気になる。面白いことは面白かったから次のセールで次回作もDlしてみるつもり。
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