【メモオフ】メモリーズオフ6 T-wave【脳をゆすげ】

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メモリーズオフの6作目。

今作の主人公

「りりす」という名の幼馴染の女の子がいる、母親とは死別、父親とは確執があり一緒に暮らしていないなど、設定はこの類のゲームではありがち。
人間性は、都合のいいタイミングで忘れていたことを思い出す木偶であり、病的な察しの悪さや行動力の無さでうじうじ悩んで堂々巡りの尺稼ぎをするいつものタイプ。主人公は最初から諦めてたけどやっぱりひどい。読み手とゲームを繋ぐ重要人物なんだから最低限の人間性は持たせてほしい。
チョークを輪切りにしてラムネとして売る、コオロギをすり潰して氷にかけてカキコオロギとして売る、文化祭でこんなことを企画する智也(一作目主人公)が建設的な言動ができる分一番まともだった。

EDを見た順番

1.ちさ

りりすの友達。
イメージチェンジ前の方がかわいい子。りりすから主人公の話を聞かされ続けたことで興味を引かれ、りりすを通してラブレターを渡し、文化祭までの1か月の間に仮恋人として付き合いを重ねながら答えを待つ。ちさ個人のルートというより、りりすが幼馴染である主人公のことが実は好きだけど、積極的に親友のちさに譲るという使い古された展開となる。主人公の優柔不断で2人の関係にいさかいが起こる自作自演なんかも序盤にはなく、次第に2人の関係がこなれていくゲーキャラ的な初々しい描写もそれなり。
ここまではよかったが、中盤以降は引き延ばしの堂々巡りで中だるみする。主人公は智紗との関係の中で何度も「嬉しい」や「寂しい」などの感情を自覚するくせに、事につけてそれに疑問符を付けて「この気持ちは本物だろうか?」などと言い回しを巧みに変えながら引き延ばす。智紗からはすでに告白されている以上は思い悩む理由がないし、そこに物語としての面白さはなく長いだけだから引き延ばしの印象が強くなる。視点をちさに変更して同じことを繰り返す演出にしても、先読みしてくださいと言わんばかりの内容なうえに同じ学校へ通って常に一緒に過ごしているのだから意味がなかった。

主人公の人間性に問題があるのはシリーズの特徴だけど、今作はヒロインも脳をゆすいだ方がいい相当なもの。智紗は子供のころに海で溺れたところをある人に助けてもらった過去があり、元々体の弱かったその人は後日亡くなってしまったらしく、自責の念や水に対してトラウマを抱えているという設定がある。主人公と付き合う過程でその人が主人公の母親であった事が発覚するが、そこからの言動が人間性を疑うものばかり。「故意ではないとはいえ母親を失わせるキッカケとなったのだから主人公を好きになる資格はない」。事が事だけに悲観的になってしまう姿は理解できるが、その事実を主人公に告白したことで賽は投げられたのだから、自分が主人公と距離を置けば何もかも元通りになるという短絡的な逃避は関係を持った以上意味がないし、本当に罪の意識を持っているのなら逃げずに頭を下げたうえで償いをするのが道理。自ら事実を告白して主人公を苦悩させた上で無視と逃避を決め込むキャラにどんな魅力があるのか。せめて主人公が暴きなさい。

ちさが一方的に関係を破綻させたのに主人公を糾弾するりりすもシナリオ煽り要員でしかないし、こんな作為的なやり取りでは真面目に読む気も失せる。親友のりりすと好意を寄せる主人公、この幼馴染2人の関係までもが自分のせいで悪化しているとわかると、「私のことは忘れてりりすとの関係を崩さないで」という旨の発言を残して再び無視を決め込む。原因であるちさが覚悟を決めて現実を受け止めなければ解決の道は開かないし、そうなってしまった原因が自分であると理解した上での行動だから腹が立つばかり。保身とも言える逃避のあげくに問い詰められて涙する被害者然とした態度だけでも不愉快なのに、自分のせいで主人公が「ちさを捨ててりりすに乗り換えたクズ」などと不当に非難されてもフォローも何もしない。自分が悪いと自覚しているのに向き合うことを恐れて逃げる。実に人間らしいムナクソの悪さ。結末は決まりきっていてどうすべきかの答えは明らかなのに、主人公は何故か二の足を踏み智紗は拒絶を決め込むという関係が長々と続くから印象も余計に悪くなる。そこしか記憶に残らなかった。

2.りりす

脳をゆすぐべき。りりすのようなタイプは、嫉妬や照れ隠しだったり主人公の問題行動を制裁するためなど、要するに何らかの理由があって行動に出るのが当たり前だと思うけど、あいさつ代わりや責任転嫁の不当な行為だから印象がとても悪い。これに対する主人公の反応で「俺は保護者のようなもんだし」とかいう訳の分からない持論を言い放った時点で地雷だった。極端な個性付けの影響で良識や倫理観が抜け落ちたキャラと、建設的な思考ができない極端な独りよがりキャラが嫌いなので、ちさとりりすルートは問題作でしかなかった。

序盤のラブレターを貰う所までは共通のルートで、そこから本当の気持ちはりりすにあるんだけど智紗はどうしよう……、という主人公の優柔不断なテキストを延々と読まされる。自分に好意を寄せる智紗に嘘をついて避け続け、「傷つくのは自分だけでいいんだ」とかいう超理論を展開する主人公と、相手の気持ちを無視して主人公と智紗をくっつけようとしておきながら情緒不安定になるりりす。こいつらの理屈の分からない頓珍漢な言動に起因するイザコザシナリオが続く。
このゲームのメインキャラは建設的な言動ができないらしく、ちさルートと同じように主人公もりりすも根本的な問題を先送りにして掻きまわすだけ掻きまわす。気持ちはハッキリして答えは見えているのに行動せず、何故か嘘をついたり真逆の行動をして引き延ばし、軋轢が生じると落ち込んだり癇癪を起こす。どんな人間であれ多少考えれば答えが出る程度のことでデタラメに引き延ばすからシナリオに作為感が出る。プレイヤーとしての隔たり感は屈指。

りりすは主人公に好意を寄せていてもそれを表現することは許されないと主張する。その理由とは、「主人公と母親を海に誘ったのは自分だから、死なせるきっかけを作った自分が全て悪い」というもので、これを根底に許されない罪を犯してしまったと自己嫌悪に陥り、「主人公を不幸にしたのだから償いとして自分が幸せにしなければならない」などと思い込むようになる。だけど実際にりりすが起こした行動といえば、都合のいい相手(智紗)を主人公にあてがったり、主人公の好意が罪深い自分に向けられているとわかると、自分に好意を寄せる友人の男に偽装恋人の話を持ち掛けて諦めさせようとするなどの自己本位。いよいよ主人公も我慢の限界となってくると今度は事につけて拒絶するようになる。そして智紗と同様の引き延ばしの堂々巡りへ……。

智紗もそうだけど、本当に罪の意識があるのならもっと前に詫びて然るべきだし、エゴ丸出しの大義名分を掲げて悲劇に浸るのではなく、全てを告白したうえで自分と相手が満足するまで何をしてでも償えばいい。償いをしなければならない相手の気持ちを無視して自らは保身に走る罪滅ぼしなんて聞いたことがない。自分の意思は抑えて主人公とくっつき平身低頭しながら償いなさい。機械的に主人公好き好きと言うけど本心がまるで見えない人形となり、昔のりりすとやらを失わせた原因を主人公が取っ払って救済。そんな話でいいのに負い目から主人公を好きになる資格はないと決めつけて勝手に悲劇に陶酔するうえに無茶苦茶やる。やばい。

主人公の気持ちが自分に向けられて遊園地デートで告白されるも「自分は幸せにはなってはいけない」という俺様ルールで拒絶するが、そもそものデートは幸せそうな顔して喜んで受け入れる行動原理の矛盾など何がしたいのかまるでわからない。「主人公が母親を失った不幸」からの救済をするというのが大前提にあるのなら、優先順位は関係のない自分の幸せ云々ではなく「主人公の幸せ」が上位になるに決まっている。それなら主人公の好意が自分に向いたと判明したその瞬間にくっつき主人公が求めているであろう姿を演じておけばいい。それが主人公にとっての幸せなのは明らかなんだから自分の意思は飲み込めばいい。弊害により自分が被る負い目なんてどうでもいいことで、それが原因で非難されようが嫌われようが主人公が幸せになる為なら甘んじて受け入れなければならないはず。その程度の覚悟もないのに身勝手な俺様ルールを掲げて周囲を巻き込み、出した結果が究極の自己愛なんだから目も当てられない。自分の都合で優先順位をその場その場で入れ替えるやばい人。
主人公が好きで失うのが嫌だったという葛藤によるもの……とも思えなくもないが、度が過ぎるので好意的解釈なんてできない。行動原理を明確にしたうえで蔑ろにするぶっ飛びシナリオ。自己犠牲とは自身が犠牲となり実害を被った上で周囲に益をもたらさなければ成立しないし、なにより覚悟が見えないと感情も揺さぶられない。映画などでは死地から何事もなく生還する作為的な名場面はよく見られるが、りりすの言動は単なる自作自演でそれにすらなれていない。

デタラメに動いて火に油を注いだかと思えば切羽詰まって主人公に泣きつき、落ち着いたかと思えば今度は記憶喪失を装ってまた掻きまわす。やばすぎる。主人公も「なぜ気づいてやれなかったのか」「俺が意地を張っていなければ」などと、なぜこうなったかの根底にある問題には目もくれず罪悪感に苛まれ反省の弁を繰り返す木偶になる。この辺りからスキップした。主人公に難ありならこれまでも多かったけど、ヒロインまでもが同水準は中々なかったと思う。そもそも真相を知らないはずの智紗はなぜコスモスの押し花を送ったのか。送って何になるというのか。問題点は枚挙にいとまがない。

3.れいん

行き倒れの24歳。主人公と同じマンションに短期契約で住むことになり、行き倒れていた自分を助けてくれた恩返しとして主人公にいろいろと世話を焼く。その過程の中で家庭環境を筆頭に諸々の抑え込んでいた気持ちをぶつけて懐の深さに包まれ情が移っていく。この流れに上記の2人のような作為感や引き延ばし目的の堂々巡りはほとんど無く、主人公もレインも察しが良くて気持ちを決めたら行動に繋げてくれるから読みやすいしイライラもしない。ただ、頭にきたら反射的に言葉として表に出したり、智紗への返事もあっさり決めて行動を起こしたり、主人公の性格の食い違いによる違和感は覚える。メインルートの罪は重い

主人公の告白を「年齢の違いによる自分の失恋」を理由に理路整然と論破して突っぱねるぐらいなら、最初から変に近づいたりしなきゃいいのに。変わりたいとか前に進みたいなどの心理が働いたとかでもないのなら、びゅーりほー女子大生さんのように話を聞いてあげる優しいお姉さん程度の立ち位置に抑えておくとか。さんざん踏み込んで関わったその後で、顔を合わせないようヒッソリと引っ越したり、文化祭の誘いのメールの返事を迷うなどの葛藤は見せるけど、これだと見方次第では弄んだだけにも見えてしまう。途中からでも主人公のほうが積極的に近寄ろうとする流れになっていれば自然に見えたと思う。
「待ってる」という最後の言葉も、レインと主人公双方の言葉に説得力を持たせるため、最低でも年単位で間を空けないと拍子抜けに。シリーズ皆勤賞の弟との血縁設定も効果的には使われていない。レインにジャーマンスープレックスを食らった旨の話をした際の信の含みを持たせた「がんばれよ」の言葉も、手を出す相手とそうでない相手の違いを弟の観点から何か言うのかと思えば結局掘り下げられなかった。姉弟設定はとってつけた程度。

年上の大人の余裕をもって受けたり流したり、融通の利かない理屈で動いてしまう大人のわがままを見せられたり、その辺りの感情は自然体で楽しく読めた。主人公が智紗でない知り合ったばかりのレインを好きになっても、癇癪を起すでもなく応援する側に回るりりすの設定や人間性も多少は挽回できていたと思う。だけど、鬱陶しいほどまでに出しゃばって勝手な事を喚き散らしていた姿はほとんど見せないので、主人公の性格同様の違和感に繋がった。統一感なさすぎ

4.くろえ

器量よしのみんなに慕われる先輩。しっかりしているように見えて実は脆いのですよというそれ。今度の主人公はうだうだ考えるのはそのままに、感傷に浸って長々と独白を垂れ流す鬱陶しさも加わった。分岐までの過程では今までと変わらない学内でのクロエしか見ていないはずなのに、ルートに入ると突如クロエを神格化してへりくだった態度になり、「学園に降臨された女神」「神秘的な美しさをまとう月光の女神」などと崇めだすから違和感しかないし、何より感情変化の描写不足でついていけない。主人公の言動が理解できず蚊帳の外を意識させられるから抵抗感がつきまとう。ニンジンやピーマンが嫌いなところが意外で可愛らしい魅力だとか、くだらないことで主人公が舞い上がって浮かれる姿を見せられるのは、そこに至るまでの描写が足りないから読むのがつらい。物語の筋道が見当たらない。「しょうがねぇなぁ」が主人公の口癖なんて操作してるプレイヤーでも知らんがな。

終盤に入ると身勝手な神聖視を反省して堂々と隣を歩けるようになろうと対等な目線で見るようにはなるけど、ダメな主人公にありがちな考えなしの暴走である「力になりたいんだ」があっけなく通るため白々しく感情移入はできない。というか、設定上の諸々の事情が絡んでいるのだから、主人公は背中を押すだけで先輩が自分で乗り越え解決すべき問題だろうあれは。父親が入院した直後に主人公の家に来ても、家を訪ねた理由の説明や見舞いだとかで家庭事情のフォローをしないから、シナリオもキャラクターも説得力を持たせる描写が足らず、何が起きても下地がユルユルでリアリティを感じない。予算問題とか親子関係とか初期設定の主人公に対する意識とか……、萌えキャラとしての設定が先行していて背景に具体性が伴わずふわふわしすぎ。導入で地盤を固めてその上に物語を組み立てなければならないのに地盤が穴あきチーズだから全部すり抜ける。活用できていないネタでハードルを上げて自爆している。先輩という人物の萌えイベントの寄せ集め

5.ゆうの

ラジオを共通の趣味として持つ後輩のハガキ職人。わけの分からない引き延ばしはなく、お互いの趣味であるラジオを通じて話が進むので自然体。主人公は、思い出したかのように口癖らしい「しょうがねぇなぁ」を連呼しだす違和感はあるとはいえレインルートと同様のまとも。ユウノへの「好き」という気持ちをはっきりさせるのが遅いけど、うじうじ悩んだりしないからいい。下地は一番しっかりしている。思いやりのある主人公のいいところ(告白の場面の言動ははどうかと思うけど)、クセがなく懐っこい雰囲気で周囲に好かれそうなユウノのいいところ、これらもイベントで分かりやすく表現されて変な偏屈設定も無いから距離が縮まっていく過程で同時に好感が生じるのも頷けた。ユウノは考え方に一定の芯があって、悩んだとしても智紗やリリスのような迷走暴走はせず、一生懸命に前向きに頑張る姿が描かれていて、明るいキャラで表情と言動がリンクして可愛げもある。作られた偏屈やぶっ飛びが見えない標準ヒロインの好例。

シナリオのデタラメ具合はトップクラス。何の面白みもない個人宛の「今日の出来事」程度のハガキが人気番組で読まれまくるのは都合よすぎ。有能ハガキ職人らしいが普段どんなネタを送っているのかが出てこないから嘘くささに説得力がついてしまう。文化祭当日に出来上がった脚本で演じた一年生の素人だらけの劇が苦労なく演劇部を差し置いて最優秀賞をとったり。勝つのは別にいいけど過程を見せないと納得はできない。脚本は別人が書いている設定もどこかへいったし、脚本の落ちがどうなったのかを見せないからシナリオに絡ませて煽った意味も薄れてる。転校生して間もないユウノが異様に慕われるようになった理由の描写も薄いからこれも嘘くささが勝つ。惚れた腫れた以外の展開に説得力が無い
一年前に喧嘩別れと転校の合わせ技で遠くに行ってしまったラジオ好きの親友カンナも、現代であれば世界中どこに居ようと連絡の取りようはあるだろうに(全員に黙って行ったとは考えにくいから友達や知り合いに聞くとか)。そのうえ、カンナの話を聞いた主人公がその日に鉱石ラジオ好きが集まるネット掲示板で偶然接触するとか、なんじゃそりゃとツッコミを入れたくなるところばかり。ダンスを知らないはずの主人公がユウノと普通に踊れる別ルートとの食い違いも至る所に見えた。いいのはヒロインだけ

まとめ

いつものことだけど展開や行動を納得させる根拠の描写が足りない。説得力の欠ける下地の上に紡がれる物語は場面ごとの結びつきが弱くて読んだ途端に記憶から抜け落ちる。イライラの余韻。

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