『ファウスト』をモチーフにした謎解きADV(フリゲ)。
『コープスパーティ』と同じようなフリゲ感。実際フリゲだけど演出面では上をいく。想像を掻き立てるイラストや日記によるイベント回想、数世代前のレコーダーやテレビから発せられる骨董感のあるBGMや足音など効果音との親和性がよく、古びた洋館を舞台とするミステリーの雰囲気がよく表現できている。ヒントから法則を導き出して暗号を入力したり、アイテムを使って土を掘ったり、中途半端な絵に書き足をしたり、謎を解いて歩を進めるパズルの質もフリゲの域を超えている。さりげなく床を軋ませて閃きを誘ってくれるような気分のいい仕掛けや、丁度いい間隔で何度も挿入されるイベントグラフィックも質が良い。ゲームとしても謎解きとしてもフリゲながら水準はとても高い。
シナリオは曲者
探索中に読むことのできるメモや日記によって断片的に舞台設定や物語が補完されていく形だが、それらは誰が書き手なのかが分からないことが多く、出てくる人物も「あの人」「彼女」などの人称代名詞で表現されているので、読んだところで書かれている内容の順序が頭で整理できない。それぞれの時系列がよくわからないから、断片的なイベントでは結びつきも弱く一本の物語の形が見えてこない。そのうえ中途半端に日本語に違和感を覚える箇所も散見するテキストが理解を更に妨げる。クリアしたところで全てが分かるわけでもなく謎は多く残った。
読んだ日記やメモはまとめられてメニューから選んで読むことができるけど、それでもやっぱりわからない。ぼかして具体性を欠くテキストと説明不足が原因なのは明白。雰囲気はよかっただけに残念なところ。
取り逃しの要素がある探索もマイナス
複数あるエンディングのうちのひとつは特定のアイテムを取り逃していると見られず、そのアイテムは普通に遊んでいたらまず取り逃すであろうタイミングで意地悪が過ぎる。攻略に頼ったのは、腕を回すヒントの「右への連続回転数は毎回一回ずつ減少する」という日本語の意味が分からなかったところ、病床ルール(これも日本語に惑わされた)、頭の向きの数え方ぐらいだったから、その隠しアイテムは当然のごとく取りこぼして存在にすら気が付かずEDがひとつ見られなかった。見ようと思えば7時間かかったゲームを最初から……。これはつらい。
館内を徘徊するネズミの要素も邪魔だった。ネズミに触れるとダメージを受け、視界が狭まったり、体力を失うと再開地点に戻されて移動速度が落ちる。それらを回復するアイテムがタンスやら本棚からいくつも手に入るのは探索のテンポをくずしているし、ごろごろと山盛り出てきたら探索で何かを見つけた時の快感が薄れるというもの。
回復でその都度使用しなければならない点も面倒くさい。ゲームオーバーにならないということを強調していたけど、そのようなテンポの阻害や手間を生み、移動速度が牛歩になったり暗闇の中を歩かされるのならゲームオーバーも同義なんだから、場面に合わせて歩く速さや視界はゲーム側で設定していればよかった。とはいえ雰囲気と謎解き自体は面白いので、謎解きに興味があればフリゲだしおすすめできます。
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